給与の締め日と支給日はいつがベスト?決め方のポイントを解説
今度、従業員を雇おうと思っています。
初めて給与を支払うことになるのですが、支給日はどう決めたらいいでしょうか?
従業員を雇用すれば、給与を支払っていくことになります。
そのときに迷うことの一つが、給与の締め日と支給日ではないでしょうか。
この記事では、給与の締め日と支給日の決め方について解説します。
一度決めるとなかなか変更が難しいので、最初が肝心です。
ぜひ貴社に合ったルールを考えてみてくださいね。
目次
給与の締め日と支給日とは
まず、「締め日」「支給日」とはどんなものかについて確認しておきましょう。
- 締め日=いつからいつまでの分の給与を支払うかという区切りの日。
期間の最終日が締め日となります。 - 支給日=定期的に給与を支払う日。
例えば、
締め日=当月15日、支給日=当月25日、の場合は、
前月16日~当月15日までの期間の給与を当月25日に支給する
締め日=前月末日、支給日=当月20日、の場合は、
前月1日~前月末日までの期間の給与を当月20日に支給する
ということになります。
決め方のポイント
給与の締め日と支給日は、どちらも、この日にしなければならないというルールはないので、自由に決めることができます。
「5・10日(ご・とおび)」といって、5や10の倍数になる区切りのいい日に決めていらっしゃる会社が多いですが、決める場合にはポイントがあります。
以下の5つです。
- 支給日は毎月1回以上とする
- 支給日は一定の期日とする
- 支給日は会社の資金繰りから決める
- 締め日は末日にする
- 締め日と支給日の間隔を確保する
順に解説していきますね。
支給日は毎月1回以上とする
給与は毎月支払われるもの、というイメージがありませんか?
それは、毎月1回以上支給しなければならないというルールがあるためです。
給与の支払い方については、「賃金支払の5原則」と呼ばれるルールが労働基準法に定められています。
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(略)
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。(略)
労働基準法
これを整理すると、以下のようになります。
賃金支払の5原則
- 通貨で
- 直接労働者に
- 全額
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定めて 支払わなければならない。
このうち、「毎月1回以上」というルールがあるため、月に1回は支給しなければなりません。
つまり、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、といった支払い方はできないということです。
一方、「月に1回以上」ですので、2回、3回と支給することもできます。
月に1回支給する会社が多いですが、半月ごとに締めて月に2回支給するケースは時々見かけます。
細かく支給日があると従業員には助かりますが、その分給与計算の回数が増えるので、よく検討が必要です。
また、時給制であれば月に2回などにも対応しやすいですが、月給制について月に複数回支給日があると月給を分割して支払わなければならないので、馴染まないでしょう。
支給日は一定の期日とする
上記の5原則の5つ目にあるとおり、給与は一定の期日を定めて支払わなければなりません。
これも何となく給与はそういうもの、というイメージで、当たり前に感じるかもしれませんね。
「○日」と決めたら、毎月その日に支払う必要があります。
先月は10日、今月は19日、来月は3日・・とバラバラに支払われると、給与支給の間隔が不定期になり、従業員の生活が不安定になってしまいます。
「今月は早く払えそうだから・・」と早めたり、「給与計算に手間取って・・」と遅らせたりすることはできません。
なお、支給日が銀行の休業日に当たった場合は、前後の営業日に変更することができます。
どちらにするかは前もって決めておく必要があり、月によって変えることはできません。
支給日は会社の資金繰りから決める
3つ目は、資金繰りの都合によって支給日を決めるということです。
給与の支給はまとまった金額が必要になるものです。
他に支払いのある日から遠ざけたり、入金のある日の後にするなど、資金に余裕のあるタイミングにしておくと安心です。
締め日は末日にする
支給日をいつにするかにかかわらず、締め日は末日にするのがおすすめです。
集計がわかりやすくなるためです。
勤怠や各手当の集計は締め日までの1ヶ月間で行うため、
- その期間の所定労働日数は何日か?
- その期間の時間外労働は何時間か?
- その期間に手当の対象になることがらは何回あったか?
など、その期間について集計を行うことが何度もあります。
締め日を末日にしておけば、いつも1日~末日までの1ヶ月間で考えればいいのでわかりやすいです。
また、入社や退職についても、キリのいい1日入社、末日退職が多くなるものです。
計算期間の途中で入社や退職がある場合、月給制だと日割り計算を行うことがあるため、その点でも末締めにしておくとわかりやすくなります。
集計のわかりやすさは意外と大事です。
締め日と支給日の間隔を十分確保する
締め日と支給日の間隔は、何日間を想定していますか?
少なくとも、暦日数で15日は確保することをお勧めします。
土日・祝日が間にあるので、営業日数で見ると、意外と給与計算にあてられる日数が少なくなってしまうからです。
特に月初や23日付近は祝日や休暇にあたる月があるため、要注意です。
私が経験した例で、「月末締め、翌月10日支給」という会社さんがありました。
締め日から支給日まで10日もあれば十分だと思うでしょうか?
ですが、このケースでは、1月の年始や5月のゴールデンウィークには、営業日数が何日も減ってしまいます。
銀行への振込依頼の日数も考慮すると、給与計算の作業日として使える日が1日や2日なんてこともありました。
うちはそんなに人数がいないから、と思っても、従業員が1人から3人、3人から5人、5人から10人と増えていったらどうでしょうか。
最初は余裕だと思っても、事業の展開によってはだんだんきつくなっていくこともあります。
また、社会保険労務士事務所など外部へアウトソーシングする場合は、自社内で計算するよりも資料のやり取りなどで時間がかかります。
自社内では何とかなった日数でも、アウトソーシング先に断られるか、締め日または支給日の変更を求められることもあります。
締め日からできるだけ早く支給してあげたい、と考える社長もいらっしゃいますが、余裕を持った日数を確保し、誤りなく確実に支給することも大切です。
一度決めたら変えるのは大変
給与に関わることは、従業員の生活に直結する重要な事柄ですので、簡単に変更はできません。
従業員への生活への影響をふまえ、十分な説明が必要になってきます。
就業規則の変更や、個別同意が必要なケースもあります。
締め日・支給日について相談したい方へ
当事務所では、締め日・支給日に関するご相談もお受けしております。
貴社の実情に合った労務管理を一緒に考えていきましょう。