従業員代表、いままで私が決めちゃってた。という社長へ。要件とリスクを確認しましょう
就業規則を労働基準監督署へ提出するときや、36協定を締結するときに登場する「従業員代表」、どのように決めていますか?
社長がリーダー格の従業員などを指名して決めているケースを見かけますが、適正な方法ではありません。
今年4月より従業員代表の要件が厳格化されていますので、改めて確認したいと思います。
従業員代表とは?
従業員代表とは、労働基準法では「労働者の過半数を代表する者」と表現されます。
会社の働くルールを決めるときに、従業員との間で協定を結んだり、従業員に就業規則について意見を聞いたりする必要があります。
その際、従業員の過半数を代表する労働組合があれば、会社はその労働組合との間で取り決めをすることになりますが、もし労働組合がなければ、従業員の中から代表者を決め、協定を結んだり意見を聞いたりします。
その代表者を「従業員代表」といいます。
労働組合のない小さな会社では、従業員代表を決めることが多いと思います。
従業員代表は、誰でもいいわけではない
従業員代表は、事業場ごとに従業員の中から一人を決めることになりますが、誰でもいいわけではありません。
決め方についてはルールがあります。
1.労働基準法でいう監督または管理の地位にある者でないこと
2.協定を結ぶためなど目的を明らかにして、投票、挙手等の方法により選出された者であること
3.使用者の意向に基づき選出されていないこと
労働基準法施行規則第6条の2 より筆者整理
1は、いわゆる「管理監督者」は従業員代表になれない、ということです。
「管理監督者」は、仕事の内容や権限、働き方、待遇などの面からみて経営者と一体的な立場にある人を指します。
会社で管理職として扱われ、役職がついているだけでは管理監督者といえない場合もありますので、安易に除外しないようにしましょう。
2は、「協定を結ぶため」や「就業規則の変更について意見を聞くため」などの目的を明確にしたうえで、何らかの民主的な方法で選ぶことが決められています。
選出の方法は、投票、挙手のほか、話し合いや書面を回覧して決める方法なども含まれます。
社長が指名するのはNG
3の「使用者の意向に基づき選出されていないこと」は、2019年4月より追加されたルールです。
たとえば次のような決め方をしてしまうと、このルールに反してしまいます。
- 社長がリーダー格の従業員にやってよと頼む
- 社長が慣例で総務担当者に決める
- 協定の提出期日が迫ってきたので、隣に座っている秘書に署名させる
2の選出方法とも密接に関係しますが、 投票など従業員が選出に関わる方法を取らずに社長が指名することは、会社の意向が反映されているとされ認められません。
この内容は、これまで通達では出ていましたが、施行規則に明記されたことにより、よりルールが厳格になりました。
選出するときは、必ず民主的な方法を取るようにしましょう。
適正な方法で決めなかったときのリスク
従業員代表を適正な方法で決めていなかった場合、36協定をはじめとする各種協定や就業規則を届け出ていても、無効とされるリスクがあります。
判例では、次のような事例があります。
残業命令に従わなかった従業員を解雇したものの、36協定が無効と判断されたために、解雇を撤回せざるを得なかった
変形労働時間制を導入して、協定や就業規則を届け出ていたものの、それらが無効と判断されたために、原則通りの労働時間で計算した未払い残業代を支払うことになった
また、会社は36協定がないと時間外労働や休日労働をさせることができないため、労働基準法違反となり、是正勧告を受けたり書類送検となったりするリスクもあります。
まとめ
従業員代表の決め方は、これまでもルールとしてありましたが、意識されることが少なかったと思います。
新たな要件が加わったことにより、今後は厳しく見られる可能性があります。
協定や就業規則が無効と判断されるなど、リスクは大きいため、適正な方法で決めるようにしましょう。
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