給与明細を発行しないのは違法?ラクになる方法も提案


毎月、給与明細をExcelで作っていますが、とても面倒です。
これって必ず従業員に渡さないといけませんか?
従業員の少ない会社様の場合、給与明細を手書きやExcelで作っているケースもありますよね。
ちょっと面倒に感じるその発行作業、必ずしなければならないのでしょうか?
この記事では、給与明細の発行義務について解説します。
発行がラクになる方法も提案しますね。
目次
給与明細は発行が必要
結論からいうと、給与明細の発行は会社の義務です。
これについては、いくつかの法律や通達で定められています。
- 賃金の支払に関する通達
- 所得税法
- 健康保険法など社会保険関連の法律
順に確認していきましょう。
賃金の支払に関する通達では「計算書」が必要
実は労働基準法そのものには、給与明細の発行に関するルールは定められていません。
ですが、賃金の支払いに関する通達では、
「使用者は、口座振込み等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払に関する計算書を交付すること。」
令和4年11月28日(基発1128第4号)
と定められています。
記載する内容は以下のとおりとなっています。
- 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
- 源泉所得税額(つまり所得税のこと)、社会保険料など給与から控除する金額
- 口座振り込みを行った金額
「計算書」と表現されていますが、内容はまさに給与明細ですね。
口座振込の対象者に限定された通達ではありますが、いまは口座振込で給与を支払っているケースがほとんどです。
この通達を根拠に給与明細を発行しなくてはならないといえます。
所得税法では、「支払明細書」が必要
こんどは税金の面から考えてみましょう。
給与には所得税がかかりますので、給与計算と深い関係があります。
所得税法では、
給与等の支払をする者は、その給与等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
所得税法第231条
と定められています。
また、記載する内容は
- 給与等の額
- 給与等の額から徴収される所得税の金額
- 年末調整で還付される所得税の金額
となっています。
給与と、給与から控除する所得税について給与明細を発行しなければならないということですね。
健康保険法など社会保険関連の法律では「計算書」が必要
さらに健康保険など社会保険関連のルールを見てみましょう。
健康保険法では、
事業主は、保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
健康保険法
と定められています。
同様の内容が厚生年金保険法、労働保険徴収法にも定められています。
以上で確認してきたとおり、給与明細の発行は事業主の義務であり、発行していない場合は違法になってしまいます。
発行の対象者は?
給与明細の発行の対象者は、雇用形態などで限定されていません。
それぞれの通達・法律では、
- 口座振込によって支払うとき
- 所得税を控除するとき
- 社会保険料を控除するとき
と別々の状況が規定されていますが、雇用形態によらず全員に発行が必要となります。
各法律ごとに当てはまる人だけ発行するというのも手間がかかりますし、労務管理上も適切とは言えないでしょう。
給与明細の発行義務に関わるミス
以下のような理由で発行していないことがありますが誤りです!
- アルバイトだから
- 働いた期間が短いから
- 毎月同じ金額だから
どれも発行が必要なケースですので、注意しましょう。
いつまでに発行すればよいか
上で取り上げた通達では「所定の賃金支払日に、~発行しなければならない」とあります。
前倒しで発行することは問題ないと思われますので、計算が確定したら、給与支給日までの間に発行するようにしましょう。
給与明細の発行をラクにする方法
それでは、毎月大変な給与明細の発行をラクにすることはできるのでしょうか?
2つの方法をご紹介しますね。
①WEB明細に切り替える
所得税法のルールについては上で解説したとおりですが、
同じ所得税法第231条で、
支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる
とあります。
電磁的方法というのは、紙での発行の代わりにPDFをメールで送信したり、WEB上で閲覧できるようにする方法などを指しています。
近年、WEB上で給与明細を閲覧する方法が増えています。
紙の給与明細だとそのものを渡す必要があるため、印刷して、封筒に入れて、配布する・・という手間がありますよね。
WEB上だと、データを登録して配信するだけのことも多いです。
給与明細の発行をラクにしたい場合、検討してみてはいかがでしょうか。
②給与計算を外部委託する
もう一つは、アウトソーシング会社や社会保険労務士事務所などに給与計算を外部委託する方法です。
外部委託した場合、自社で給与明細を発行するよりラクになるだけでなく、正しく計算が行えるので安心です。
給与明細の印刷まで依頼できるか、WEB上での発行に対応しているか、など自社のニーズに合った委託先を選びましょう。